転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!
王太子との政略結婚を受け入れたのは、己の立場と名家の誇りを守るためだった。
なのに今更、目の前に現れたのは、あの忌まわしい女の血脈を受け継ぎ、しかも『聖女』という立場で民の尊敬を集める存在。
本来ならば、聖なる裁きで誰にも知られず処刑されるだけの、儚い生贄だった筈なのに。
「このままでは、王家の象徴としての求心力が、聖女へと奪われてしまうのではないかしら」
そしてなにより、彼の記憶も、視線も――あの小娘に向かってしまう。
「ならば――そうなる前に、舞台から落としてしまえばいいのです」
老齢の侍女がアリシアの意を汲み、静かに答えた。
差し出された銀盆の上、揺れるワインが夕陽を映して赤黒く濁っている。
「そうね、お父様と教皇猊下にお手紙をしたためます」
中年の侍女は今や何も語らず、静かに書き物机の上を片付け始める。
ドレスの裾を翻し、アリシアもまた、そこから先は無言のまま静かに筆を取った。
その筆先からこぼれるのは、優美な筆致に包まれた猛毒を持つ言葉の数々。
仮面のような笑顔の奥、アリシアの心は冷ややかに、そして激しく嫉妬の炎を燃やしていた。
突如湧いた、聖女という異物を、いかにしてこの盤上から取り除くか。