転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!
ロイドは意味深な笑みを浮かべ、グラスをジークに差し出した。
ジークは無言でグラスを合わせる。
冷たい音が、彼の内に燃える警戒心をさらに煽った。
「異物、か」
「判断を下すのは陛下と教皇だろう。だが、俺の個人的な見解を言うなら……」
ロイドの声が低くなる。
「まるで、誰かの魂が、リオ・アリミヌエの器に入り込んだように見える。故に異物だ。……ま、たとえ生意気に物言う聖女になったとしても、俺の食指には引っかからないな。俺の記憶が確かなら、あの身体は女としての魅力など皆無の、貧相すぎるガキだったからな」
ロイドはグラスを置くと、不意に真面目な作り笑顔を顔に張り付けた。
(……いまのあいつを知りもしないくせに)
ジークは内心で冷たく吐き捨てながら、グラスを傾け、一気に飲み干す。
彼の喉が上下する様子を、ロイドは楽しそうに眺めていた。
「ジーク。お前は、王の犬か?」
ロイドの言葉はそこで途切れる。
ジークはロイドから引き出したい言葉をほぼ引き出したと理解し、グラスを叩きつける様にテーブルに置いた。
「……相変わらず、可愛げのない堅物だな。だが、その頑固さが、いつかお前の身を滅ぼすぞ」
何も答えないジークに対し、そう言い残すとロイドは席を立った。
一人残され、静かにグラスを見つめる彼の頭の中には、理央が不器用に祈りの詩を口ずさんだときの姿が浮かんでいた。
もし、聖女が本当に奇跡を起こせる存在に変質したのだとしたら、ムールブルク派と教会上層部の双方にとって最大の脅威となる。
そして同時に、この歪んだ体制を救う唯一の希望となる可能性も秘めている。
「俺の信じるもの……か」
その言葉は、誰に聞かせるでもなく、夜の闇に吸い込まれていった。