転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!
その夜、ジークは貴族たちの社交場のひとつとなっている、一見すると街の酒場風の店でグラスを傾けていた。
琥珀色の酒が揺らめき、彼の冷たい瞳にわずかな光を映す。
「やあ、ジーク。珍しいな、お前が一人で飲むなんて」
背後から声をかけられたジークは、振り返ることなく答えた。
予想通り、彼の待ち人である同僚は現れた。同じ近衛騎士団に所属しているとはいえ、第二隊のジークと第一隊の彼とでは、中々詰所内で顔を合わす機会が少ない。
本日、この人物が非番である事を知り、あえて網を張っていたのだ。
「たまにはな」
同期で、旧知の仲であるロイド・ムールブルク。
整った顔立ちに軽薄な笑みを浮かべ、ジークの向かいに腰を下ろす。
「しかし、聖女の護衛も楽じゃないだろう。噂は聞いているぞ。お飾りの聖女が、今や教会をかき回していると」
「噂は当てにならない」
「ほう? だが、俺が聞いた話では、聖女はまるで別人のようだというがな。俺が昔見た時は言葉も話さず、まるで薄気味悪い人形だった。それが今では、教会の予算や装飾にまで口を出すお転婆だそうだ」
ロイドの口調は穏やかだが、その目はジークを値踏みするように探っていた。
「……お前の関知するところではない」
「俺はただ、心配しているだけだ。聖女というものは、聖教会にとって信仰の根幹を成す存在。それがもし『異物』ならば、早々に排除されて然るべきとは思わないか」