転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!
午後になって、少し天候が荒れ始めた。
ルキウスは、片側に流した長い黒髪が風で煽られぬよう片手で押さえながら、塔下に広がる花畑を眺め、それから教会の本堂へと続く渡り廊下へ目を向ける。
彼はジークの命により交代勤務の管理と記録精査を担当していた。
「……また彼女が何か起こすとすれば、そう日が経たないうちでしょうね」
「それ、期待して言ってます?」
背後からひょいと顔を出したのは、レオだ。
鳶色の瞳がいたずらっぽく光る。
「少しは緊張感を持て。ここは王都随一の重要警備区画だ」
「わかってますって。けど、聖女様って聖女って感じしないんだよなあ」
「表現が雑だ」
「でも的確でしょ? たまーにだけど、ジーク様が言い負かされかけてるとこ、俺、目撃しましたよ」
「……黙って業務に集中しろ。人事評価の記録に書くぞ」
「えっ、やだ。俺の警備報告書だけまた矛盾が出ちゃうじゃないですか」
そんな軽口を叩きながらも、レオの視線は塔の窓に注がれていた。
「……でも、真面目な話すると」
「?」
「なんか、今のあの聖女様、寂しそうに見えるときあるんすよ。ほんとに普通の、等身大の女の子って感じですし」
ルキウスは一瞬だけ視線を横に逸らした。
だが、それには何も答えず、静かに記録用の冊子を手に取った。
「……私情は挟むな。だが、目は離すな」
「ジーク様と同じこと言ってるじゃないですか」
「それが副官の仕事だ」
冷たくもどこか柔らかいルキウスの口調に、レオは小さく笑った。