転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!
王太子妃アリシアは、いつも以上にイライラとした様子で筆を走らせていた。
先日、教皇および枢機卿カティスに送り付けたはずの密書に対して未だ返答がないため、苛立ち紛れに催促の手紙を送るのだ。
文面は一見、礼儀正しい貴婦人の挨拶で始まっていたが、その内実は私情と嫉妬に満ちたものだった。
『かつて殿下が心奪われた侍女――その忌まわしい娘が、神に選ばれるなど、あってはなりません。教会の威信を守るためにも、早急なるご判断を』
アリシアは白い手で扇をぱちんと閉じ、唇の端をゆがめた。
「聖なる裁きの日まで、あとわずか……」
彼女の背後では、侍女がひとり、沈黙のまま控えていた。
主であるアリシアに意見するものなどない。
「リオ・アリミヌエ……私の誇りと地位を脅かす、遺恨そのもの」
アリシアの生家、ムールブルク侯爵家は代々、教皇派の有力貴族である。
教会との結託は、政治的にも彼女の権威を保つ要であった。
王太子妃アリシアからの個人的な、しかし無視できない進言は、再び枢機卿カティスのもとへと届けられた。
だがそれが、聖女を巡る次なる審判の引き金となることを、この時点ではまだ誰も知らなかった。