転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!

 王は深く椅子に背を預け、天井を仰いだ。
 秩序か、血脈か。
 それとも――破壊か。

 そのとき、ひとりの文官が血相を変えて駆け込んでくる。

「陛下! 王都北区で、また聖女様による『聖なる光』が目撃されたとの報が……!」

 その知らせに、玉座の空気が一変した。

「北区だと? あそこは……聖教会からもっとも遠い場所ではないか」

 フェルディナンが目を見開く。
 王太子はすぐに文官に詰め寄った。

「誰かが、聖女を外へ連れ出したのか……?」

「目撃者によれば、北区の養護院に聖女様がふと現れ、数刻立ち寄ったそうです!」

「まさか……いや、近衛第二隊が常駐しているあの厳戒態勢の塔から、どうやって……」

 王の脳裏に、ある懸念とともに、希望のような小さな火が灯る。
 リオ・アリミヌエは奇跡を起こす聖女として、今もまだ存在している。
 そして、その奇跡は誰にも制御出来ない力であることを、彼はようやく理解し始めていた。

 ★

 同刻、王都北区の路地裏。

「……まさか、本当に正面突破で塔を抜け出して、こんな下町で陽動を仕掛けるとはな」

 闇夜に紛れたジークが、深い溜息をつきながら隣の少女を見下ろした。
 黒い外套をすっぽりと被った理央は、悪びれもせずふふんと鼻を鳴らす。

「当たり前でしょ。教会側が『処刑イベント』を公式発表して世論を誘導しようとしてるなら、こっちは『奇跡の無料体験キャンペーン』でカスタマーを完全に味方につけるのよ。広報戦略は、現場で直接情報の主導権を握った方が勝つんだから!」

「……お前のその、時折口にする理解不能な単語の羅列はなんとかならんのか」

 呆れながらも、ジークの口元には隠しきれない笑みが浮かんでいた。
 とある聖女と、とある騎士。
 そして彼らに賛同する者達が、教会の作り上げた『予定調和の未来』を根底から壊滅させるために、いよいよ派手に動き始めていた。
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