転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!
「カナン、大丈夫にしてた? ここって教会の直営って話よね……」
すかさずアスランが懐から書類を捲っていく。
「養護院の運営費統括は、カティス枢機卿ですね」
「あの太ってるおじさんね。予算を横領してこんな場所にシワ寄せをいかせてるわけだ」
理央の心のうちにある『ブラックリスト』の筆頭にその名前がある。
続けて、教皇以下、私利私欲に走った者達。
自分は正義の代弁者ではないが、たとえば、ここに居るカナンや、この身体の元の持ち主の少女の犠牲の上に成り立つ『真っ黒な制度』には、単純に腹が立つ。
室内に滑り込むようにして入ってきたジークが「次にいくぞ」と短く告げる。
理央は出掛けにカナンをそっと抱き寄せ、耳打ちした。
少女が何を告げたのかは、ジークにもアスランにも聞こえなかった。
ただ、カナンの瞳に強い決意の光が宿ったことだけはわかった。
裏門を出る直前に、理央は両手を天に掲げる。
「どーん、ってね」
その両手からまるで流星のような光が上空へと突き抜けていき、闇夜を刹那、鮮やかに彩った。
「人間花火みたい」
「――そういえば『爆発聖女』だったな」
前を向いたまま感慨深げにジークに言われ、理央は反射的に彼の背中を叩く。
その程度の衝撃ではびくともしない体幹に、ツンと顎を上にあげ、裏門のくぐり戸を抜けていく。
そして夜の街へ。
北区には貧民街があり、とても暗い。
街灯などない為、ゲリラ的なプロモーション行動を起こすには都合の良い場所だった。
路地裏に倒れこむようにして寝ている老人に、何かできないだろうか。
理央は隣を行く騎士を見上げるが、静かに首を横に振られた。
今はまだ、ただ騒動を起こして、世間の注目を引き付けることしかできない。
滲む悔しさに理央は唇をきつく噛みしめ、次に選択されている場所にむかって走る。
その晩、北区に現出した光の柱は、七本。
柱の中心で黄金の髪をした少女の姿を見た者は少なくない。