転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!
教皇は既に失神しているようだった。
かなり高齢な為、ショックに耐えきれなかったのだろう。
今回、見事に味方に引き入れることに成功した若手枢機卿ルメルが、代わりに返事をするよう理央に向かって小さく頭を下げる。
神への信仰に関してプライオリティを一番としているバルデュスは、現実逃避したまま瞳を閉じて経文を唱え続けている。
「そこで、この筆跡を第三者機関に精査してもらいました。何故、この儚い身が都合よく聖女としての啓示を受けたのか、皆さんも気になりますものね」
理央の横に立ち並んだジークが、一枚の重厚な鑑定書を差し出した。
「近衛騎士第二隊の長であり、此度監察官として特別監査に入っていたジーク・オベールレヒトだ。筆跡鑑定を行った結果、この啓示文はカティス枢機卿と、その子弟である上級神官セラノの筆跡と完全に一致した」
「……貴方たち、私利私欲のためにやりすぎたのよ」
理央は心から残念そうな表情を浮かべる。
そしてゆっくりと壇上の中央に到達した理央は、会場全ての者に相対するよう振り返った。
その時だった。
理央の背後から、七色の光が迸った。
光は祭壇を照らし、聖堂の天井を突き抜けて夜空に届く。
半狂乱になっている王太子妃アリシアは、侍従たちによってなんとか席に押さえられている。
やがて彼女の目は虚ろになり、ただ目の前の光景を信じられないといった様子で、唇を震わせていた。
王太子は拳の震えをそのままに、娘の起こす奇跡を、すべて記憶しておかなければと強く思った。
「これが、此度の聖なる裁きです。裁定が下されるのは、聖女とされた少女ではありません。神の名を利用し、民を欺いた者達ではないでしょうか」
進み出た枢機卿ルメルが、厳かにそう宣言した。
「我々は教会の過ちを認めましょう。新たに内部監査機関を設け、幾つもの歪んだ古き慣習を正し、我々は変わるでしょう。これを、九十余名の署名と共に、正式にアリミヌエ聖教会法に則った『改革宣言』とさせていただきます」