転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!

 賓客席に居る面々は、王太子夫妻、貴族議会代表と、いずれもムールブルク家の息がかかった者たちだった。
 王太子妃アリシアは手にしていた扇の骨を無意識にへし折り、床に落とす。

(こんなはずでは……!)

 アリシアの心の中で、その言葉が何度も繰り返される。
 あの祭壇にいる女は処刑台で黙って死に、自分の手を汚さずに脅威が消える、都合の良い筋書きだったはずだ。
 しかし、彼女は今、憎むべき娘の血を引く女として堂々と目の前に現れ、自分たちが築き上げてきた盤石な権威を、たった一人で粉々に砕いている。

 隣に座る王太子フェルディナンは、食い入るようにこの舞台を見つめていた。
 彼の娘は、もはや父親の庇護が無くとも、信頼できる友を得て、今まさに自らの足で運命との戦いに挑んでいる。

「黙れ黙れ黙れぇ!」

 アスランの指示で、下級神官達に引き摺られながらカティスが絶叫する。

「黙るのはあなたの方よ——私は罪を問われている。なら、はっきりさせて。腐敗を暴いた罪? それともこの身に流れる血そのもの? それを神が本当に罪とするのなら、私は喜んでこの身を捧げるっていいたいところだけど、そんな理由で死ぬなんて時代錯誤もいいとこよね」

 一瞬だけ、理央は賓客席へと視線をやって、ふっと肩を竦めた。
 その視線が突き刺さり、アリシアの顔が屈辱で引きつった。

「これは……かつて教会が実行した『神託の儀』における禁忌と、魂の召喚についての記録。そこには、無理やり異界の魂を引き寄せた事例が詳細に記されています。なお、私のこの身も神託の儀式に何度も何度も臨んでいるのですよ。直近ですと、一か月程前でしたでしょうか」

 その一文を読み上げると、困惑のどよめきが場内に起こった。
 さらに理央は、啓示文の控えを高く掲げた。

「そして神託の儀式に必須と言っても良い存在が、生贄となる『聖女』です。そんな聖女候補に対して、神の名を騙って書かれた文書の筆跡が、枢機卿を名乗る者、および上級神官のものと一致しています」

「その女を黙らせなさい!!!!」

 瞬間、我慢の限界を超えた賓客席のアリシアが立ち上がって声を荒げるが、理央は余裕の笑みを浮かべるだけで、再びカティスを見下ろす。
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