転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!
午後、理央とジークは連れ立って、北区にある養護院を訪れていた。
そこは、かつて理央がゲリラプロモーションでこっそりと奇跡を届けた場所だ。
子供たちは理央の姿を見ると、歓声を上げて駆け寄ってくる。
「リオお姉ちゃん!」
「わー! また来てくれた!」
理央は子供たちに囲まれ、その頭を優しく撫で、笑顔を向ける。
彼女の周囲には、いつも仄かな光の粒子が輝いていた。
それは、もはや神の奇跡ではなく、彼女自身の温かさの具現化のようだった。
「聖女さま……もう、聖務顧問官さま、ですね」
養護院の院長に新しく就任した、理央の元部屋付き筆頭侍女であるエイラが、理央に話しかける。
「聖女でも顧問官でも、どっちでもいいです。子供たちには『リオお姉ちゃん』でいいって言ってるんですから」
理央はそう言って、子供たちと一緒に笑う。
その隣で、ジークはただ静かに彼女の姿を見守っていた。
彼の氷蒼の瞳には、かつての使命感や警戒心はとうに無く、ただ一人を守り抜くという絶対的な熱と、深い溺愛が満ちていた。
子どもたちの笑い声が絶えない。
カナンが新しい刺繍を教え、アスランが低すぎる声の祈祷で子供を泣かせ、レオは「遊ぼうぜ!」と子供たちに追いかけ回されている。
「まったく、にぎやかだな」
ジークがため息をつくと、理央はセイラとともにクッキー生地を練りながら、軽い口調で言う。
「いいじゃない。平和ってことよ」
「……もう大丈夫そうだな」
ジークがぽつりと漏らす。
その言葉は、まるで彼女自身に問いかけるようだった。
「なにが?」
理央は手を止めて、彼を見上げる。
「お前だ。……もう、ひとりで無茶をするような真似はしないか」
ジークの視線は、理央の目から離れない。
その真剣な眼差しに、理央はドキリとした。
「そうね! 聖女の仕事もそれなりにやり甲斐があるとは思うけど……誰かさんが、これからもずっと『共犯者』でいてくれるなら、もっと楽しいかな」
理央は一気に言葉を吐き出すと、慌てて顔をそむけ、ツンと顎をあげる。
けれど、その頬はほんのり赤く染まり、養護院の喧騒の中でも誤魔化しきれなかった。