転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!
「……謹んで、その『契約』をお受けしよう。期間はそうだな『終身』でどうだろうか」
ジークの甘く低い声が、理央の耳に届く。
横から伸びた大きな手が理央の顎を優しく捉え、振り向かせる。
彼の視線が真っ直ぐに彼女の目を見つめる。
氷蒼の瞳の中に、驚愕と羞恥が綯い交ぜになって訳の分からない表情をしている自分が見える。
「つつしんで……って、ちょっと待って、心の準備が……んっ」
抗議の言葉は、重なった唇に甘く塞がれた。
目を見開く理央の腰を抱き寄せ、ジークはこれまでの冷徹な騎士の仮面を完全に脱ぎ捨てたように、深く、そしてひたすらに甘く口づける。
「ん、ちょっ……子どもたち、見てるっ……!」
「見せておけばいい。お前が俺のものだと、世界中に知らしめる」
息継ぎの隙間に落とされた独占欲の塊のような言葉に、理央は抗うことを諦め、彼の胸にそっと額を預けた。
(ああもう、この過保護な騎士様には一生勝てそうにないわ……)
フォリフォンヌ王国の年代記には、当代聖女リオ・アリミヌエの名が一度は記され、やがて静かに抹消された。
だがそれは、決して悲しい結末ではない。
息苦しい聖女という『鳥籠』から抜け出し、ひとりの自由な女性として生きる権利を勝ち取った証なのだから。
混乱の時代、ひとりの少女が現れ、希望の光を灯した。
歴史の表舞台から痛快に寿退社を決めた彼女は、その後も最強の過保護騎士の『溺愛』という名の監視を受けながら、愛する人たちと共に、いつまでも忙しく、そして賑やかな日々を生きたという。
<完>


