転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!

「……そういうとこ、嫌い」

「しかし、見抜く者は必要だ。たとえば、演技と本音の境界を定めるために」

 理央はまっすぐに彼を見上げた。

「ジークは、神託の儀の『本当の目的』、知っているの?」

 氷蒼の瞳は、ただ静かに理央へと注がれる。

「俺の任務は、聖女の護衛と監視だ」

「護衛って、護る価値があると判断された場合に限る、でしょ?」

「そうだ。だからこそ今も判断し続けている」

 彼の目は、誤魔化しを一切許さない光を帯びて、まっすぐに彼女を見ていた。

「今のリオ・アリミヌエが、何を信じ、何を守ろうとしているのか。その本質をな」

「……ずるいな、それ」

「お前も、充分ずるいのでは」

 二人の距離が、ふと近づいた。
 空気が張りつめ、触れれば壊れそうな緊張が漂う。
 だが、そこで理央がふっと笑った。

「じゃあ、見せてあげる。私が私であるってこと」

「どうやって?」

「──次は教会の『接待交際費』を、半分に削減する提案を出すわ」

(あんな目的不明の飲み会代や、権力者への過剰な贈答品経費なんて、現代企業の監査なら一発アウトよ! 不正の温床はまず予算から絶つ!)

 ジークは一瞬絶句し、それから呆れたように眉をぴくりと動かす。

「……敵が爆発的に増えるぞ」

「味方も、ね」

 ──この聖女は、間違いなく教会の秩序を壊す『異物』だ。
 ──だが、それは本当に排除して良いものなのだろうか。

 むしろ、世界の方が変わる時を迎えているのかもしれない。という、微かな願望。

 その変化の波に、ジーク自身も既に抗う気はなかった。
 だが、王の僕である彼に出来ることは、決して多くはない。

 
< 83 / 151 >

この作品をシェア

pagetop