転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!
その夜、ジークは理央を聖女の間に送り届け、部屋付きの侍女に引き渡した後、教会から離れた。
行先は王宮の西門に位置する、近衛騎士団本部。
彼が本来、根城としている場所である。
近衛騎士団の主な役割は、君主の身辺警護を担う精鋭部隊だ。
平生は現王を始めとする王族の警備を行い、有事には儀仗や勅命による任務にあたる。
聖女の監視と警護を任じられて以降も、二日に一度は立ち寄るようにしていたのだが……それがだんだん疎かになり、三日に一度、五日に一度へと変わり、ついに本日で七日も留守にしていた。
深夜を大きく過ぎたころ、ジークが自身の執務室へと顔を覗かせる。
副官のルキウスが、久方ぶりに姿を現した主に向かって狐のように目を細めると、慇懃な態度で腰を折った。
「随分と、優雅な時間に出勤されましたな」
「……」
ジークは嫌味たっぷりの副官に向かって鷹揚に頷いた後、執務机の上に山脈のように積み上げられた決裁書類の山を見て、内心で深いため息を吐いた。
「色々と、立て込んでいてな」
「おっと、ジーク様お久しぶりです! お疲れの所申し訳ないんすけど、こちらの裁可優先してください!」
鳶色の瞳に癖毛の青年が、隣室から顔を覗かせる。
「レオ、今日の夜間警備はお前が担当か」
「今日というか、今週は全部俺っす。特別手当出るし、再来週は収穫祭ですからね~。フローラに特別な贈り物をする予定なんで、なるべく稼いでおきたいんすよ」
「そうか、再来週だったか……」
すっかり異端の聖女に振り回され、年間行事がジークの頭から抜け落ちていた。
「ええ、再来週なんです」
銀縁の眼鏡のブリッジに細長い指をかけ、ルキウスが念を押すように復唱する。