転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!
フォリフォンヌ王国において、最も華やかで、最も政治的緊張が走る日――それが、年に一度の『収穫祭』である。
この祭りは元来、五穀豊穣を神に感謝するための宗教行事であった。
だが、今では王権の正統性を国民に知らしめる、極めて政治的なショーでもある。
王家主導の神事として行われるため、聖教会内での儀式は一切挟まれない。
舞台となるのは、王都リシャールの中心部、白石で造られた巨大な儀礼用広場だ。
幾何学文様が彫り込まれた石畳の上を、豪奢な行列が練り歩く。
列の先頭には、騎士団と近衛兵たち。
続いて、現王と王族たちが金装束をまとい進む。
教皇と枢機卿、上級神官がその後に控え――そして聖女は、最奥の神輿に乗るかたちで、祭の終盤に姿を現す。
この日ばかりは、聖女という存在もまた国の祭祀を担う顔として、民衆の前に姿を晒さなければならない。
日頃は教会に引き籠っている聖女が、広場の中心に立つ唯一の日なのだ。
祭りの終盤、広場の中央に設けられた円壇の上で、神官たちの荘厳な詠唱に続き、聖女が祈りの歌を捧げる。
歌は、神託の言葉を模した古語によるもので、ほとんどが定型詩のように伝承されている。
加えて聖女は、舞ではないものの、ゆるやかで優美な身振りをともなう儀礼動作を行うのが通例だった。
それは、誰もが神の存在を信じるという演出であり、同時に王家が、聖教会を含むこの国の民衆すべてを統べる象徴でもあった。
だが――その年の収穫祭は、歴史に残るものとなる。