禁忌の花 〜最強になったらイケメン寄ってきた〜
「だいたい、そんなの知ってどうするの?」


本を閉じながら尋ねると、ルカは待ってましたと言わんばかりに目を輝かせた。


「そんなの決まってるじゃん!」


胸を張る。


「オレが強くなって、アビスを全部ぶっ倒すんだ!」


……出た、アホ発言。ルカの得意技、根拠のない自信。


「……仮にアビスが本当にいたとしても、私たちが勝てるわけないでしょ」

「そんなのやってみなきゃ分かんないじゃん!!」

「分かるよ。その本にも書いてあるでしょ?」


私はルカの手元を指差した。


「アビスは普通の人間より、五倍以上も強いんだって」

「だったら、六倍強くなればいいじゃん」

「……」

「簡単でしょ?」

「どこが?」


思わず笑ってしまった。


本当に、この子は馬鹿だ。

でも、そんな馬鹿みたいな夢を、本気で語るルカを見るのは嫌いじゃなかった。
むしろ___少しだけ羨ましいと思う。

私は昔から、夢を見るのが苦手だった。
どうせ無理。危ないながらやめよう。失敗したらどうする?そんな事ばかり考えてしまう。

だから、ルカみたいに何も疑わずに『できる』と言えることが、少しだけ眩しく見えた。


「……アイリは?」

「なに?」

「アイリは、強くなりたくないの?」


不意にそう聞かれて、私は言葉に詰まった。


強くなりたい。その気持ちは、確かにあった。

でも___


「私は……」


何となく空を見上げる。木々の隙間から見える青空は、どこまでも穏やかだった。


「強くなるなら、誰かを倒すためじゃなくていいかな」

「じゃあ、なんのため?」

「……さあ?」


まだ七歳の私には、その答えが分からなかった。

ただ、大切なものを、失わないくらいの力があればいい。その程度にしか、考えていなかった。
< 2 / 48 >

この作品をシェア

pagetop