禁忌の花 〜最強になったらイケメン寄ってきた〜
「じゃあさ!」


ルカが突然、私の手を取った。


「一緒に強くなろうよ!」

「え?」

「俺がアリスを守るから!」


真っ直ぐな瞳に、迷いのない笑顔。


「だからアリスも、俺のこと守ってよ」


あまりにも当たり前みたいに言うから、私は思わず笑ってしまった。


「……うん。いいよ」


その約束が、私たちの未来を、大きく変えることになるなんて。このときの私たちは___まだ知らなかった。

森の向こう側に、私たちの知らない世界が、静かに広がっていることを。

そして、いつか、この平穏な日々が永遠ではなかったと知ることになることを。


「あ、こんなところにいた」


不意に、聞きなれた声がした。

ルカの声に重なるように届いたその声に、私は顔を上げる。木々の隙間から、こっちへ歩いてくる人影が見えた。


「お兄ちゃん!」

私は思わず立ち上がった。それにつられるように、隣にいたルカも立ち上がった。


「アイリス」


近づいてきたお兄ちゃん___ノアは、少しだけ困ったように笑った。


「こんなところで何してたんだ?」

「本読んでたの!」

「そっか」


優しい手が、私の頭をぽんっと撫でる。


昔から変わらない。お兄ちゃんは、私が森で一人になっても、帰りが遅くなっても、いつだって最後には迎えに来てくれる。

……なんだかんだ、過保護なんだよね。


「で?」


ノアの視線が、ゆっくりとルカへ移る。


「それは?」

「これ!アビスの本!」


ルカが得意げに本を掲げた。ノアは表紙を見た瞬間、ほんの少しだけ眉を寄せる。


「……アビス」

「うん!」


ルカは自信満々に笑った。


「ノア兄も一緒にアビス倒そうよ!」


数秒の沈黙。ノアは本とルカを交互に見て、それから小さく息を吐いた。
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