禁忌の花 〜最強になったらイケメン寄ってきた〜
怖かった。本当は、すごく怖かった。

魔物が目の前にいたとき爪、が振り下ろされたとき。
もし避けられなかったら、もし魔法が間に合わなかったら。

考えれば考えるほど、今さら身体が震えてくる。


でも。


「……勝った」


その言葉が、嬉しかった。

私たちが、私たちの力で。初めて魔物を倒した。


「アイリ!」


ルカが駆け寄ってくる。


「すごかった!最後の魔法、めちゃくちゃかっこよかった!」

「ほんと?」

「うん!オレも、絶対あんな魔法使えるようになる!」

「じゃあ今度はルカの番だね」

「任せて!」


二人で笑い合った___その瞬間だった。


「……痛っ」


腕に、鋭い痛みが走った。


見ると、服の袖が少し裂けている。その下に、細い傷ができていた。

どうやら、さっき魔物の爪を完全には避けきれていなかったらしい。


「これくらい……」


大したことない。そう言おうとした。


「アイリ……?」


ルカの声が、震えていた。


「……怪我したの?」

「え?」


振り返る。ルカは私の腕を見つめたまま、固まっていた。
さっきまで笑っていた顔が、嘘みたいに青ざめている。


「……ルカ?」

「怪我か?」


その声を聞いたノアも、すぐに私の前へしゃがみ込んだ。


「見せて」

「これくらい平気だよ」

「アイリス」


優しい声なのに、妙に逆らえない。

私は渋々、腕を差し出した。ノアが傷を確認する。


「……浅いな」


ほっとしたように息を吐いた。


「大きな傷じゃない。帰ったらちゃんと手当しよう」

「ほらね?」


私は笑ってみせる。


「全然大丈夫」

「……そうだね」


ノアはそう言った。でも、その目は全然笑っていなかった。
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