禁忌の花 〜最強になったらイケメン寄ってきた〜

005.運命

ルカが地面を蹴った音を合図に、私も駆け出す。

目の前にいる魔物は、二メートルほどの熊のような身体に、どこか恐竜を思わせる大きな爪。絵本に出てくる『魔物』という言葉を、そのまま形にしたような姿だった。


___怖い。

一瞬だけ、足が竦みそうになる。でも、ここまで何年も、私たちは練習してきた。

大丈夫。そう自分に言い聞かせて、魔物から目を逸らさない。


お兄ちゃんから教わったことを思い出す。
魔物は、人間ほどの知能を持たない。だからこそ、私たちは考えて戦う。

ルカが正面から魔物を引きつける。私は、その反対側へ。


「こっち!」


ルカが叫ぶ。

魔物が大きな腕を振り下ろす。ルカは、それを紙一重でかわした。


速い。私には真似できない動きだ。

でも、私には私の戦い方がある。魔物の背後へ回りながら、指先に魔力を集める。

もっと、もっと強く。今まで何度も繰り返してきた魔力操作。

身体の奥から、力が集まってくる。


「アイリ!」


ルカの声がした瞬間、私は手を伸ばした。


「___っ!」


指先から、勢いよく水が放たれる。一直線に魔物へ向かっていった水が、その身体を包み込む。


一瞬の静寂。

そして___ぱきん。


魔物の身体が、淡い光の粒へと変わっていった。風に乗って、きらきらと消えていく。


「……」


何が起きたのか分からなくて、私はしばらく立ち尽くしていた。


「……やった?」


ぽつりと呟く。


「やった!!」


ルカの声が森中に響いた。


「アイリ、やったじゃん!」

「……うん」


力が抜ける。今になって、自分の心臓がうるさいくらい鳴っていることに気づいた。
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