禁忌の花 〜最強になったらイケメン寄ってきた〜
「ルカ、アビスは架空の存在だよ。この世界にはいない」


ルカの顔が、みるみる不満そうに歪んでいく。


「ノア兄までそんなこと言うの!?」

「だって本に書いてあることだろ?」

「でも絶対いるもん!」

「どうして?」

「いるったらいるの!」

「……根拠は?」

「……気持ち!」

「それは根拠じゃないな」

「なっ……!」


私は思わず吹き出した。


「ふふっ」

「アリスまで……!もういいよ!!」


ルカはぷいっと顔を背けると、私の腕を掴んだ。


「オレはアイリと二人で行くから!」

「え?」

「アビスを倒して、二人で世界最強の魔法士になるんだ!」

「ちょ、なんで私まで?」

「だってアイリ、強いじゃん!」

「はあ?何それ」


思わず声を上げると、ノアは小さく笑った。


「アイリス巻き込まれたな」

「お兄ちゃんも笑ってないで助けてよ!」

「ごめんごめん。ルカがあまりにも楽しそうだから」

「お兄ちゃんまで……!」


なんだか納得いかない。でも、二人が笑っているのを見ると、結局私も笑ってしまう。

___こういう時間が、私は好きだった。

くだらない話をして、くだらないことで笑って。明日もきっと、同じような一日が来ると思える。

それが当たり前で。ずっと続くものだと、疑いもしなかった。


「ね、アイリ!」


ルカが私の顔を覗き込む。


「明日から修行な!」

「……えぇ?」

「絶対強くなるんだから!」

「世界最強?」

「もちろん!」


キラキラと輝く瞳。その瞳を見ていると、どうしても『無理だよ』なんて言えなかった。

世界最強なんて、夢物語だと思う。の魔法士になるだけでも、それなりの魔力量と技術が必要なのだ。

ましてや、世界で一番なんて。

……でも。
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