禁忌の花 〜最強になったらイケメン寄ってきた〜
低い声だった。


「なんだよ」

「それ以上、こいつに近づくな」

「はっ。何だ?その目」


男はシオンの左目を見て笑った。


「その目の傷も、お前が弱かったからついたんだろ?」


空気が変わった。シオンの表情から、温度が消える。


「そんな雑魚が、女一人守れんのかよ」


私は思わずシオンを見る。


左目に残る、大きな傷。私が出会った頃には、すでにそこにあったもの。

今まで、私は一度も聞かなかった。
シオンが何を経験したのか。どうして、その傷を負ったのか。

だからこそ、その傷を笑う言葉がひどく嫌だった。


「……やめてください」


私が低く言う。けれど、男は止まらない。


「嬢ちゃんも、こんな奴に付き合ってないで___」


伸ばされた手が、私の腕へ向かう。

その瞬間、ぐっと身体を引かれた。


「……え?」


次の瞬間には、私はシオンの腕の中にいた。

腰に回された腕。すぐ近くにある、シオンの鼓動。


「……汚い手で触るな」


耳元で落とされた声は、今まで聞いたことがないほど低かった。


男たちも、一瞬言葉を失う。

シオンは私を背中側へ隠すように立った。まるで、私に触れさせることそのものを、拒絶するように。


「こいつは俺のだ」


シオンが男を睨む。


「___お前らなんかに渡さない」


その言葉に、背筋がぞくりとした。


怖い……のに。

なぜか、私はシオンの背中から目を離せなかった。


「……シオン」


名前を呼ぶと、シオンが振り返った。


「大丈夫か?」

「……大丈夫」

「どこか触られてない?」

「うん、大丈夫だよ」


それを聞いて、シオンの表情がほんの少しだけ緩んだ。


「……ならいい」


その一言が、胸の奥に、静かに残った。
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