好きになる前に、恋人になった――いつか、君につながる
小明は少し考えて、うなずいた。

「嗯……我懂你的意思」
(うん……奈緒の言いたいこと、わかる)

奈緒はほっとしたように笑った。

「所以,心意我收下了。谢谢你,小明」
(だから、気持ちだけ受け取るね。ありがとう、小明)

そして、また餃子を一つ口に運ぶ。

「这个真的很好吃」
(これ、本当に美味しいね)

小明も笑った。
奈緒がふと思い出したように言う。

「啊,对了,小明」
(あ、そうだ。小明)

「我记得你上次说,最近在跟一个人约会,对吧?」
(この前言ってたよね。最近、デートしてる人がいるって)

ん?
初耳だ。

小明は一瞬、しまったという顔をして、俺を見る。
奈緒も気づいたらしい。

「啊……对不起。我是不是不该说?」
(あ……ごめん。言っちゃまずかった?)

「没事没事。反正很快就会被凯发现」
(いいの、いいの。どうせ凱にはすぐばれるし)

思わず笑う。

「小明,你太好懂了」
(小明、わかりやすいんだよ)

「是你直觉太敏锐了」
(あなたの勘が鋭すぎるのよ)

そっちかよ。
奈緒がくすくす笑った。

「我觉得挺好的啊。就是上次我们喝酒以后,开车来接你的那个人吧?」
(でも、いい感じなんじゃない? この前飲んだあと、車で迎えに来てくれた人でしょう?)

小明は少し照れたようにうなずいた。

「像这样开车来接你什么的……感觉还挺甜的」
(車で迎えに来てくれるとか……なんか甘くていいよね)

甘くていい。

へえ。
奈緒は、そう思うんだ。

好きな相手なら、迎えに行くくらい普通にするだろう。
それが奈緒には、甘く感じるのか。

小明が視線を落とした。

「只是……我有点搞不懂他到底怎么想」
(ただ……相手がどう思ってるのか、ちょっとわからなくて)

奈緒の表情が変わる。

「怎么了?」
(どうしたの?)

「我们有联系,可是……我总觉得他好像在跟我保持一点距离」
(連絡は取ってるんだけど……なんとなく、少し距離を置かれてる気がして)

奈緒はすぐには答えなかった。
そっと、また小明の手に触れる。

「如果完全不是这样的话,你就当我没说」
(全然違ったら、聞き流してね)

「但是小明,你最近是不是太累了?」
(でも小明、最近ちょっと疲れてない?)

小明が少し考えて、うなずいた。

「累。最近特别累」
(疲れてる。最近は特に)

まあ、そうだろうな。
ここ最近のスケジュールはかなり詰まっていた。

「辛苦了,小明。一直谢谢你」
(お疲れさま、小明。いつもありがとう)

小明が照れくさそうに笑う。

「没事啦。最近已经稳定一点了,而且也是工作嘛」
(大丈夫よ。最近は少し落ち着いてきたし。それに仕事だしね)

奈緒は小明の手に触れたまま、続けた。

「人太累的时候,心里没什么余力,容易往不好的方向想」
(疲れてるときって、心に余裕がなくて、つい悪い方に考えちゃうこともあるでしょう?)

「等自己冷静下来再想想,可能会发现其实什么都没发生」
(落ち着いてから考えると、実は何も起きてなかったってこともあるし)

小明が奈緒を見る。

「……好像有道理」
(……なんか、わかるかも)

「只是可能哦」
(かもしれない、ってだけだよ)

俺は黙って2人を見ていた。

「如果你在意的话,要不要直接问问他?」
(気になるなら、直接聞いてみたら?)

小明がものすごく嫌そうな顔をする。

「说不定他还会问你,‘啊?什么事?’」
(もしかしたら相手は、「え? 何のこと?」って言うかもしれないよ)

相手が悪いとも、安易に大丈夫とも言わない。
ただ、別の可能性を一つ置く。

小明は少し考えてから、ぽつりと言った。

「……问不出口」
(……聞けない)

それから、奈緒を見る。

「奈绪,你问得出口吗?」
(奈緒なら聞ける?)

奈緒が一瞬止まった。
それから、ふっと笑う。

「我大概也问不出口」
(私もたぶん聞けない)

小明が吹き出した。

俺も笑ってしまった。
あれだけ落ち着いて話していたのに、自分も聞けないのか。

奈緒も笑っている。
2人の笑い方が、まるでずっと前からの友達みたいだった。

なんだか、少し羨ましかった。

◇
次章「近づく距離」は、2026年10月2日(金)公開予定です。
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