君の歌声に恋をした。天才作曲家と無自覚天然少女。
第二章 「この声、誰だ」
大学二年生になった今岡小海は、その日も大学の講義を終えると、寄り道もせず自宅へ帰っていた。
大学生としての生活と、音楽活動。
二つを両立する毎日は決して楽ではない。
講義の合間に連絡を確認し、帰宅すれば作曲ソフトを立ち上げる。
依頼された楽曲を仕上げる日もあれば、自分が作りたいと思った曲を朝までかけて完成させることもある。
十九歳という年齢にしては忙しい生活だったが、小海自身はそれを苦痛だと思ったことはなかった。
音楽を作ることが好きだった。
ただし、最近は一つだけ面倒なことがある。
周囲が自分を「天才」と呼ぶことだ。
小海自身は、自分が特別だとは思っていない。
ただ、音を組み合わせて、そこに自分なりの感情を乗せているだけだ。