屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました
「まぁ、好きに思っていろ。とにかく、ここは売り手がついた。お前は早く出て行け」

 一瞬、言葉の意味が理解できなかった。

「……は?」
「ここはもう売ったんだ。今月いっぱいで出て行けよ」

 叔父は感情のない声で続ける。
 頭の中が真っ白になる。

 なにを言っているのかわからない。ここを売った? 誰が? どうして?

「ちょ、ちょっと待ってください……何の話ですか? ここは私が継いで……だから維持費だって払っていたじゃないですか」

 声が裏返る。両親が亡くなったとき、私はまだ学生だったのもあり、不動産業をしている叔父が書類関係の整理をしてくれた。
 それは助かったが、私名義の土地になっている以上、勝手に売ることなんでできないはずだ。

 叔父はそんな私を鬱陶しそうに見たあと、小さく舌打ちした。

「ここは元々俺の親父が住んでいた土地だったんだ。とにかく、もう決まった話だ」
「決まったって、そんな勝手な――」

 言い返しかけた瞬間、庭の方から子どもたちの笑い声が聞こえてきた。

「夏音! 水出していいー?」

 いつも通りの平和な声。
 それと対称的な叔父の冷えた表情を見ていると、それが冗談ではないのだけは、嫌になるほど伝わってきた。
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