屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました

二章 契約結婚

 叔父の話は本当だったのだと、嫌でも思い知らされたのは、それから数日後だった。

 土地建物の権利自体がすでに第三者へ売却されている――そんな悪夢みたいな事実を、私は顔なじみの弁護士の口から淡々と告げられることになった。

 両親から『何かあったときはこの先生を頼りなさい』と言われていた老弁護士は、険しい顔で資料をめくりながら、何度も「合法的に処理されていますね」と繰り返した。

「名義変更も売買契約も、形式上は問題ありません。こちらとしても無効を主張できる材料が乏しいんです」
「でも、両親はそんな話、一度も……」
「お気持ちは分かります。ただ、法的に取り返すのは難しい。残る方法は、買い戻しくらいです。購入者ご本人と直接交渉するしかないでしょう。とはいえ、企業としてここを購入されていると買戻しはかなり難しいと思いますよ」

 淡々とした説明に目の前が暗くなっていく。
 両親との思い出が詰まったこの屋敷が、もう自分の手を離れているかもしれないという現実は、頭では理解しても感情が追いつかなかった。

 そんな私を見て、弁護士は少しだけ表情を和らげる。

「購入者についてはこちらでもすぐ調べてみます。面会の打診もしてみましょう」
「お願いします……。どんな方でもいいので、お話だけでも……」

 藁にもすがる思いで頭を下げた。
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