屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました
「いえ、文句を言うつもりなんてありません」
「そうか。まぁ、それが当然だよな。お前は元々九条家の人間ではないのだから」
叔父はそれ以上興味を持つ気もないらしい態度だった。そのとき。
「あら、夏音じゃない。お久しぶりね」
「玲子さん」
やって来たのは、私より三歳年上で叔父の娘である玲子さんだ。
美人で仕事もできて、昔から周囲の誰もが一目置く存在。長い黒髪を美しくまとめ上げ、上質なブランドスーツを完璧に着こなした玲子さんは相変わらず華やかで、立っているだけで周囲の視線を集めるような存在感をもっていた。
現在は九条不動産の専務として活躍している。
「お久しぶりです」
「あなたみたいな人がなんでここにいるのかしら。いくらいいドレスで着飾っても、庶民が紛れ込んでるのがすぐわかるわ」
玲子さんは口元に笑みを浮かべながらそう言い、その笑顔とは裏腹な棘のある言葉を口にした。
「結局、血筋って大切なんだと再確認することができるわね……」
私はその言葉に口をつぐむ。
これは、昔から彼女や叔父に何度も向けられてきた言葉だった。
私は養子として九条家に入った人間であり、九条家と本当の血の繋がりはない。
それに玲子さんたちが持つ、生まれながらの気品や自信のようなものを感じる場面も確かにあるので、反論する気力も湧かなかった。