屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました

 そして数秒後、玲子さんの視線が鋭く私へ向けられた。

「夏音、あなた……清正さんにまで取り入ったの……?」
「え……?」
「最低っ!」

 怒りに顔を歪めた玲子さんが勢いよく歩み寄り、そのまま手を振り上げた。私は反射的に目を閉じる。
 だが予想していた衝撃は訪れず、おそるおそる目を開けると、清正さんが玲子さんの手首を掴んでいた。

「はしたない真似はよしてください」
「でも……この子が誘ったんでしょ! この子は昔から、こうやって人に取り入るのがうまいのよ!」
「違うと言っているだろう。これ以上、妻を侮辱するなら許さない」

 普段の静かな声とは違う鋭い叱責が響く。その場の空気が一変し、玲子さんは言葉を失ったように唇を噛み締めながら身体を震わせた。

 それでも彼女は諦めきれないように私を睨み続ける。その目には怒りだけでなく悔しさまでも滲んでいるように見えた。
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