屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました

十章 守りたいもの

 屋敷へ戻る車中でも、そして帰宅して玄関をくぐったあとも、玲子さんの怒りの表情を思い出すたびに気持ちは重く沈んでいった。
 そして、私はとうとう堪えきれなくなって清正さんへ問いかけた。

「あの……玲子さんとはどのような関係だったんですか?」

 意を決して尋ねると、清正さんはそのまま淡々と答える。

「留学している時の同級生で昔から知っているが、特に親しい間柄ではない」
「でも……名前、呼んでたし……」

 私が今、清正さんを下の名前で呼んでいるのは、彼が呼んでほしいと言ったからだ。もしかして同じように玲子さんにもお願いしたことがあるのだろうか。玲子さんも随分親しげだった。

 そして彼女が、私と清正さんが結婚したのを知って怒っていたのは、彼女の気持ちが清正さんにあるからだと思う。私に対してあんなに憤りの表情を見せる玲子さんは珍しかった。

 清正さんは少しだけ意外そうな顔をした後、微笑む。
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