屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました

「ちなみに……契約結婚って、いつまで続けるつもりなんですか」

「君は、気軽に十億の屋敷が手に入ると思うか?」
「……それは」

 十億。改めて口にされると、その額の現実味のなさに頭がくらくらする。
 そんな私に社長は無慈悲に告げた。

「一生に決まっているだろう。普通の人間なら、一生かかっても返せないような額の取引を、君はしたいと言ったんだからな」
「一生って……」

 思わず口に出してしまっていた。かなり衝撃的だったから……。

 一生社長と一緒? こんなに冷徹な人間と一生一緒に住めるのだろうか。元々、苦手意識の方が強く、今日さらに不可解になったところだ。

「何か言いたいって顔だな」
「しゃ、社長だって、本当に一生契約結婚なんかでいいんですか? 例えば、普通に結婚したい相手ができたらどうするんですか……」

「それはないだろうが、もしもそんなことがあれば、その場合は契約終了だろうな」
「じゃあ、つまり、社長が普通に結婚したいと思う女性と出会えば、契約はなくなる……」

 活路を見いだせたのでは、と思った私に、社長はきっぱり言う。

「俺がどこにでもいるような女性に好意を抱き、結婚したいと思うことはまずない。そもそも女性と関わる時間もない。そんな無駄なことは期待するな」

 そうかと思っていたが、この人は、人を好きになるという機能自体がないのか……。
 それにはやけに納得できる私に、社長は静かに視線を向けた。
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