屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました
どこか妙によそよそしくて、むしろ緊張しているようにすら見えるその態度が不思議だ。
角倉先輩が「なんだったんですか、社長」と聞いたが、部長も課長も「いや、特には……なにも……」とただ言葉を濁すだけだった。
それから三十分ほど経った頃、「九条さん、会議室へ」と部長にメールで呼ばれた私は、嫌な予感を覚えながら、会議室の扉を開ける。
そこには部長と課長が並んで座っていた。
二人とも妙に姿勢がいい。そして開口一番。
「……朝霧社長と結婚したというのは本当なんだな」
真剣そのものの表情でそう尋ねられ、私は思わず背筋を伸ばした。
やっぱり社長から聞いたのだ。
「いつから付き合っていたんだ……?」
「えっと……」
「全然そんな気配なかったからな……」
当然の疑問だと思う。
だって実際、付き合っていたわけではないのだから。
私は曖昧に微笑みながら適当に誤魔化すことしかできなかった。
「社長がお見えになったのも、その件の手続きについてだった。それから、当分は社内で公表しないので、何かあったときは助けてやってほしいと」
「社長が……?」
思わず聞き返す。
そんな配慮をする人には思えなかった。
けれど目の前の二人の反応を見る限り、それが事実なのだろう。
私は覚悟を決め、深々と頭を下げた。