屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました

四章 失態

 結局、ほとんど眠れなかった。

 朝霧社長への文句とこれから総務の方には顔を出さないようにというお願いを頭の中で何度も組み立てているうちに空が白み始め、どう考えてもこのまま眠れそうにないと諦めた私は、大きく息を吐きながらベッドから這い出した。

 リビングへ向かい、まだ少し眠気の残る頭で扉を開けた瞬間だった。

「ひゃっ……!」

 思わず悲鳴が漏れる。ソファに朝霧社長がいたのだ。

 少し前に帰宅したらしく、ネクタイは緩み、シャツの襟元もわずかに乱れている。
 テーブルには飲みかけのブラックコーヒー。その横で社長はソファにもたれながら目を閉じていた。

 なんというか……とても疲れている。それも本人が隠しきれないほどに。

 冷徹人間だとか、血の色が紫色なんじゃないかとか、散々好き勝手に思っていた相手なのに、こうして目の前で露骨に疲れた姿を見せられると自分と同じ人間なんだな、と当たり前のことを思う。
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