屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました
「え……」
心臓が大きく跳ねる。
ほんの少し顔を動かしただけで触れてしまいそうな距離に息を呑みながら見上げると、コーヒーの香りがかすかに鼻をくすぐった。
「この契約結婚を終了させるには、俺が君を好きにならないといけないんだろう? 今のままでどうやって好きにならせる気だ?」
低く落ちてきた声に肩が震える。
「こういったチャンスにキスの一つもできないようじゃ、一生かかっても無理だな」
いや、なんでそこでキスなんて話になるの。
そもそもキスをしたら好きになるもの? この人はそんな単純な人なの?
いや、たぶん違う。
違うはずだけど、本人がそう言ったのなら少しは効果があるのだろうか。
目の前では朝霧社長がどこか挑発するような顔でこちらを見ていて、その視線を受けるたびに心臓の音ばかりが大きくなっていく。