屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました

 子どもたちを見送ったあと、私はエプロン姿のままキッチンに立ち、鍋をかき混ぜながら何度も深呼吸を繰り返していた。
 今日は一緒に食事をする約束の日。つまり絶好のチャンスだ。

 恋愛漫画でもドラマでも、手料理イベントはかなり重要なイベントである。
 胃袋を掴むとはまさにこのこと。

「キスじゃなくて絶対これでしょ。むしろ王道……!」

 一人でぶつぶつ言いながら、私は鍋の中を確認する。
 今夜のメニューはビーフシチュー。

 時間をかけて煮込んだ牛肉はほろほろになるまで柔らかく仕上がり、香ばしく焼き上げたバゲットも準備した。
 さらに食後には小さなチーズケーキまで冷蔵庫で待機している。

 我ながら非常に気合いが入っている。

「待ってなさいよ! 社長の胃袋!」
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