屋敷を守るための契約結婚だったのに、気づけば冷徹社長に囲い込まれていました

 そんなふうにそわそわしながら時計を気にしていると、玄関のドアが開く音が聞こえた。
 そしてすぐにリビングに社長が姿を現した。

 あれから数日ぶりに姿を見た社長は、いつも通り整ったスーツ姿で、疲れているはずなのにどこにも隙がない。寝起きのときは、多少隙もあったのに。そう考えて、またキスの話を思い出す。慌てて頭を下げた。

「お、おかえりなさい」
「……ただいま」

 短いやり取りなのに、なぜか胸がどきりとする。
 いや、落ち着け。今日は社長をドキドキさせる日なんだから。

 そう自分に言い聞かせながらも、久しぶりに直接顔を見たせいで妙に緊張して、視線を合わせることすら難しい。
 そんな私を見ながら、社長は静かにジャケットをハンガーに掛けると、長い指でネクタイを緩めた。

 たったそれだけの動作なのに妙に絵になっているせいで、私はそちらをそっと見てしまっていた。
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