未完成フレーム——after.2「文化祭から数週間後」
文化祭から数週間が経った頃、廊下に文化祭当日の写真が貼り出された。
朝のホームルームで担任がその話をした時、柊くんと一瞬目が合った。
だけど、それだけ。
教室で言葉を交わさないのはいつものことだった。
だから私は、部活が始まる前の人が少ない時間を狙って、こっそりその廊下を見に行った。
実行委員が作った校門の大きなアーケード。
どこかのクラスのお化け。
呼び込みするメイド姿の生徒。
当日ほとんど映像研究部の上映会場にいた私は、初めて見る文化祭の光景だった。
「……楽しそう」
もう少し見て回ればよかったかな、なんて苦笑いがこぼれる。
だけど廊下の掲示板一面に貼り出された沢山の写真の中から見つけてしまうのは、やっぱりスクリーンだった。
上映が始まる前の写真、だろうか。
何も映し出されていない真っ白なスクリーン。
その前に並んだパイプ椅子には、人が疎らに座っているだけだ。
私は、ついその写真に近付いて、目を凝らす。
——いない、か。
そう思って写真から顔を離すと、すぐ後ろから手が伸びてきて私の視線の先を指さした。
「ここにいるじゃん」
その声に驚いて一歩下がると、私の真後ろにいた柊くんの足を思い切り踏んでしまった。
「わっ……!」
「イテ」
わざとらしく片足を持ち上げる柊くん。
「ご、ごめん」
「驚きすぎ」
「だって、急に声かけるから……」
私はリュックを背負い直しながらそう言った。
柊くんは小さく笑い、またさっきの写真を眺めた。
「にしても、な。映研部の写真これだけって」
私も隣に並んで、同じように眺める。
「ね。しかも上映前だよ」
「映研部員、楠木さんしか写ってないし」
「え……」
私?どこに——
少し背伸びをして、もう一度写真を覗くと、柊くんが「だから、これでしょ」と指さした。
そこには確かに私がいた。
上映開始を待つ、私の後ろ姿が。
「あ……ほんとだ」
そう言うと、柊くんは私に視線を向けた。
「え。自分探してたんじゃないの? さっき」
「あはは、まさか。ちが……」
そこまで言いかけて、私は黙って踵を下ろした。
つい、前髪に触れる。
「……」
その隙間から彼を見上げる。
キョトンとしていた柊くんの顔は、すぐに何かを察したような顔になった。
「……ふーん」
「な、なに」
「いや?べつに」
柊くんはそう言って微かに笑い、顔を逸らす。
「早く、部活行こうよ」
私は誤魔化すようにそのまま歩き始めた。
後ろをついて歩く柊くんの足音に、気を取られる。
時々聞こえる口笛が、なんだか妙に腹立たしい。
私は一体、誰の姿を探していたんだろう——なんて。
考えるのは、やめた。
朝のホームルームで担任がその話をした時、柊くんと一瞬目が合った。
だけど、それだけ。
教室で言葉を交わさないのはいつものことだった。
だから私は、部活が始まる前の人が少ない時間を狙って、こっそりその廊下を見に行った。
実行委員が作った校門の大きなアーケード。
どこかのクラスのお化け。
呼び込みするメイド姿の生徒。
当日ほとんど映像研究部の上映会場にいた私は、初めて見る文化祭の光景だった。
「……楽しそう」
もう少し見て回ればよかったかな、なんて苦笑いがこぼれる。
だけど廊下の掲示板一面に貼り出された沢山の写真の中から見つけてしまうのは、やっぱりスクリーンだった。
上映が始まる前の写真、だろうか。
何も映し出されていない真っ白なスクリーン。
その前に並んだパイプ椅子には、人が疎らに座っているだけだ。
私は、ついその写真に近付いて、目を凝らす。
——いない、か。
そう思って写真から顔を離すと、すぐ後ろから手が伸びてきて私の視線の先を指さした。
「ここにいるじゃん」
その声に驚いて一歩下がると、私の真後ろにいた柊くんの足を思い切り踏んでしまった。
「わっ……!」
「イテ」
わざとらしく片足を持ち上げる柊くん。
「ご、ごめん」
「驚きすぎ」
「だって、急に声かけるから……」
私はリュックを背負い直しながらそう言った。
柊くんは小さく笑い、またさっきの写真を眺めた。
「にしても、な。映研部の写真これだけって」
私も隣に並んで、同じように眺める。
「ね。しかも上映前だよ」
「映研部員、楠木さんしか写ってないし」
「え……」
私?どこに——
少し背伸びをして、もう一度写真を覗くと、柊くんが「だから、これでしょ」と指さした。
そこには確かに私がいた。
上映開始を待つ、私の後ろ姿が。
「あ……ほんとだ」
そう言うと、柊くんは私に視線を向けた。
「え。自分探してたんじゃないの? さっき」
「あはは、まさか。ちが……」
そこまで言いかけて、私は黙って踵を下ろした。
つい、前髪に触れる。
「……」
その隙間から彼を見上げる。
キョトンとしていた柊くんの顔は、すぐに何かを察したような顔になった。
「……ふーん」
「な、なに」
「いや?べつに」
柊くんはそう言って微かに笑い、顔を逸らす。
「早く、部活行こうよ」
私は誤魔化すようにそのまま歩き始めた。
後ろをついて歩く柊くんの足音に、気を取られる。
時々聞こえる口笛が、なんだか妙に腹立たしい。
私は一体、誰の姿を探していたんだろう——なんて。
考えるのは、やめた。


