愛してるの期限が切れる前に
 水も滴るという形容がぴったりな、目にかかる前髪が濡れたような艶を放っている。顎を引いて唇に手をあてがい、考えるふうな仕草をしているが、そのせいで前髪から覗く澄んだ青い瞳が強烈なほど印章的だった。

『話題の人物レオのすべて。恋愛観から人生観まで徹底解明』

 表紙には玲桜の特集を飾る文句が大きく書かれてある。

「ちょっと?」
「――えっ、あ。すみませんっ」

 列が動いたのに気づかずにいると、後ろから年配の女性に声をかけられた。
 慌てて、玲桜が表紙の雑誌をカゴに入れたのは、衝動的だった。余計な出費だとわかっていても、どうしようもなく今の玲桜が知りたかった。
 ドキドキする心臓をどうにか宥めながら、アパートに戻った百花は、花が寝る八時までの時間を慌ただしく過ごした。子ども番組の合間に流れる地域ニュースは、駅前にできた商業施設とマンションの話題をしていた。

「あっちゃ、よーんで」

 居間の隣部屋に敷いた布団に寝転がった花が、両手で自分の両脚を持ちながら、絵本の読み聞かせをねだった。起き上がらないのは、だいぶ眠たいからだ。
 最近は、ずっと寝る前の読み聞かせの本は”あっちゃ”だ。
(内容覚えちゃったな)
 百花は暗記した文を花の隣に横たわりながら読んだ。
 幼児に読む本は、文章も少なく、テンポもいい。この本はとくにどれも同じリズムで読めるようになっているのが、花には心地いいのかもしれない。
 三度目の読み聞かせが終わる頃には、花はすやすやと寝息を立てていた。

「おやすみ」
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