愛してるの期限が切れる前に
 百花が馴染めなかった場所こそが”普通”であり、”みんなしていること”だと言った人もいた。普通ができない百花が怠けていると責める冷めた目に、百花の心は萎縮して、なにも言い返せなかった。
 でも、そんな百花を両親だけは責めなかった。

「百花が生きやすい場所を探そう」

 そう言って、両親は通信高校への進学を勧めてくれたのだ。おかげで今は、自分のペースが確立できている。通信高校に集う生徒たちは、百花のように学校生活から弾かれた者だけでなく、望んで通っている者もいた。毎日顔を合わすわけではないので、クラスの雰囲気も悪くない。気の合う友達ができればいいし、淡々と授業を受けることに罪悪感や疎外感がないのも気が楽だった。
 記憶が正しければ、このすぐあと鳳玲桜がアイスコーヒー片手に現れたはずだ。

「もも」

 ――ほら。

 店内の雰囲気が変わった気がして、百花は顔を店の方に向けて、頭上から振ってきた声の主を見遣った。
 目にかかる薄茶色の前髪に、黒色の瞳をした美貌の青年。鼻梁から唇、顎先を繋ぐラインが完璧で、きっと神様が丁寧に時間をかけて作ったのだろうと思わせる端整な顔立ちは、今日も美しい。すらりとした長躯が貧相に感じないのは、それぞれのパーツのバランスのよさだ。長い脚が長すぎに見えないのも、小さな顔が不格好に感じないのも、彼が美と奇跡の集合体だからだ。
 今日の玲桜(れお)は、全身黒で統一していたが、それぞれの素材の出す微妙な色の差違が絶妙で、お洒落だ。ハイネックに中二病満載の十字架のネックレスを合わせても様になるなんて、いったいどういう仕様になっているのか。
(チートすぎじゃない?)
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