愛してるの期限が切れる前に
 テーブルに肘をついてアイスコーヒーを飲む彼は、まるで一枚のスチル画みたいにきまっている。
 どこにでもあるコーヒーショップ店が、玲桜といるだけで特別な空間になった。

「ももの好きは息が長いな。そのキャラ押しも九年目だろ」
「一途だからね」
「二次元限定だけどな」
「いいじゃない、二次元最高」

 推しのキーホルダーを得意気に揺らして見せると、玲桜がアイスコーヒーを持った手の甲に額を押しつけ「ははっ」と声を立てて笑った。

「じゃ、俺はももの推し活に貢献できたってわけだ。だったらご褒美があってもよくない?」
「え、なに? ドーナツでも買ってこようか?」

 スマホ片手に言うと、「甘いのは苦手」と玲桜に止められた。
(だよね、知ってる)
 けれど、突然ご褒美なんて言われても、対応に困ってしまう。

「それはそうと、課題進んでないけど、もしかしてつっかえてる?」

 玲桜が開きっぱなしのノートを見て言った。

「うん、やっぱり人がいると集中できなくて。この英文の意味もよくわかんないし」
「どこ?」

 玲桜が身を乗り出すから、百花もテーブルに身体を寄せた。

「あぁ、ここはね」

 玲桜は英文を指でなぞりながら、すらすらと翻訳していく。百花がつっかえていた文法の解説つきだ。

「なるほど。あ――、これはわかったけど、英語はわかんない。昔、辞めちゃわないでちゃんと塾続けてれば、私も玲桜みたいに読めるようになってたのかな」
「それはもものやる気次第じゃない? だらだらしてても時間と金の無駄だよ」
「辛辣ね。でも正論」
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