こいがえり ――変わってしまった君と、変わらない私。
第1話 君がくれた、たったひとつの宝物
雫には、昔からひとつだけ、大切なお守りがある。
小さな、小さな貝殻。
白くて、少しだけ薄いピンク色が混ざって
いる。
手のひらに乗せれば、すっぽり隠れてしまうくらいの、小さな貝殻だ。
高校二年生になった今も。
雫はその貝殻を、いつも大切にしていた。
普段は、小さなポーチの奥。
誰にも見つからないような場所に、そっと入れている。
そして。
病院へ行く時。
入院する時。
怖い検査を受ける時。
手術を受ける時。
雫は必ず、その貝殻を握る。
ぎゅっと。
小さな手の中に包み込むように。
「……大丈夫」
誰に聞かせるでもなく、そう呟く。
すると、不思議と少しだけ落ち着くのだ。
――大丈夫やって。
もう何年も聞いていないはずの声が。
耳の奥で聞こえる気がする。
――俺がおるし。
「……」
雫は、ポーチの中に入っている貝殻を指先でそっと触った。
「……蓮くん」
その名前を呼ぶのは。
何年ぶりだっただろう。