71歳の恋愛小説家
夫の死
東雲加奈子(しののめかなこ)七十一歳は、マンションのベランダに立ち手すり壁に寄りかかりながら暮れなずむ空を眺めていた。
七十一歳だけれど、だいたいいつも十歳位は若く見てもらえる。
若い時からそうだった。高校生の時にはミニスカートに髪の毛を両サイドでくくっていて友人と遊んで遅くなった夜、電車の改札口で
「お嬢ちゃん小学生が夜遊びしたらあかんでえ」
と言われて、思わず周りを見渡したら誰もいなかったので、ああ自分の事かと気が付いた。
“なんでやねん“と心の中で突っ込んで、
「おじさん私もう中学生だよ」
高校二年生だったがさばを読んでみたのだが
「そうか、中学生か、でも家の人が心配するからな、はよ帰り」
と言ってくれたおじさんに手を振って、誰も待っていない家に帰ったのをなぜだか思いだした。
七十歳を期に、おしゃれ染めで明るいブラウンに染めてハイライトを入れているので若見えするのかもと、そんな事をつらつら考えながら、ベランダから街を眺めている。
でも私の友人は先日五十代に見えると言われたと大層喜んでいたなあ。少し盛ったお褒めの言葉だっただろうが、確かに彼女は若く見える。
でもこの頃は六十歳過ぎるときちんとしている人なら八十歳くらいまでは、きっと皆若く見えるだろう。
それだけ高齢者が自身を身綺麗に保ちアクテイブに行動しているからだと思う。
人生百年時代というが、そこまでは生きたくはないけれど、八十歳くらいまでは自分の脚で歩いて身の回りの事もきちんとできる高齢者でいたいものだ。
六十になると自分を構って化粧したり、洋服も面倒がらずにおしゃれを楽しんでいる人と、そうでない人では見た目にはっきりと差が出てきてしまう。
加奈子の周りの友人たちは皆お化粧も洋服もきちんと整えて外出している。
加奈子はそんな友人達を見習って、自分自身も怠けずに身綺麗にしていなければと、自戒するのだった。
暑かった夏も終わろうとしている九月初め、もう夕方には肌寒くなる。
ここは三十五階建ての高層マンションで、加奈子の部屋は八階の二LDKだ。
ずっと戸建ての家に住み地に足を付けて暮らしていたので、最初の頃はこの高さになれなかったが、今はここからの景色がとても好きだ。
特に陽が沈む前夕焼けの空を見られる日は、最高にときめくのだ。
今日一日の嫌な事も誰かに迷惑をかけて落ち込んだことも悲しかったことも全部消してくれるように、街が闇に沈んでいくそんなひと時、ぽつりぽつりと明りが灯り始める街の景色にほっとする。
都会の真ん中のマンションからのそんな景色を一人眺めながら、加奈子は慌ただしかったこの三年を思い起こした。
七十一歳だけれど、だいたいいつも十歳位は若く見てもらえる。
若い時からそうだった。高校生の時にはミニスカートに髪の毛を両サイドでくくっていて友人と遊んで遅くなった夜、電車の改札口で
「お嬢ちゃん小学生が夜遊びしたらあかんでえ」
と言われて、思わず周りを見渡したら誰もいなかったので、ああ自分の事かと気が付いた。
“なんでやねん“と心の中で突っ込んで、
「おじさん私もう中学生だよ」
高校二年生だったがさばを読んでみたのだが
「そうか、中学生か、でも家の人が心配するからな、はよ帰り」
と言ってくれたおじさんに手を振って、誰も待っていない家に帰ったのをなぜだか思いだした。
七十歳を期に、おしゃれ染めで明るいブラウンに染めてハイライトを入れているので若見えするのかもと、そんな事をつらつら考えながら、ベランダから街を眺めている。
でも私の友人は先日五十代に見えると言われたと大層喜んでいたなあ。少し盛ったお褒めの言葉だっただろうが、確かに彼女は若く見える。
でもこの頃は六十歳過ぎるときちんとしている人なら八十歳くらいまでは、きっと皆若く見えるだろう。
それだけ高齢者が自身を身綺麗に保ちアクテイブに行動しているからだと思う。
人生百年時代というが、そこまでは生きたくはないけれど、八十歳くらいまでは自分の脚で歩いて身の回りの事もきちんとできる高齢者でいたいものだ。
六十になると自分を構って化粧したり、洋服も面倒がらずにおしゃれを楽しんでいる人と、そうでない人では見た目にはっきりと差が出てきてしまう。
加奈子の周りの友人たちは皆お化粧も洋服もきちんと整えて外出している。
加奈子はそんな友人達を見習って、自分自身も怠けずに身綺麗にしていなければと、自戒するのだった。
暑かった夏も終わろうとしている九月初め、もう夕方には肌寒くなる。
ここは三十五階建ての高層マンションで、加奈子の部屋は八階の二LDKだ。
ずっと戸建ての家に住み地に足を付けて暮らしていたので、最初の頃はこの高さになれなかったが、今はここからの景色がとても好きだ。
特に陽が沈む前夕焼けの空を見られる日は、最高にときめくのだ。
今日一日の嫌な事も誰かに迷惑をかけて落ち込んだことも悲しかったことも全部消してくれるように、街が闇に沈んでいくそんなひと時、ぽつりぽつりと明りが灯り始める街の景色にほっとする。
都会の真ん中のマンションからのそんな景色を一人眺めながら、加奈子は慌ただしかったこの三年を思い起こした。
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