71歳の恋愛小説家
本当にあっという間の出来事で、子供達に連絡する暇もなかった。
遺体を引き取らなくてはいけないので、病院に紹介してもらった葬儀屋にまず連絡して自宅に遺体を安置してもらえるように手配をしてから、子供達に連絡したのだった。
長男、長女、次男の三人の子供達は皆この愛知県内に住んでいたので、長女の裕子に電話して事情を話して兄と弟に連絡するようにと頼んだ。
しっかり者の長女は、最初は絶句していたが涙声でわかったと言うと連絡係を了承してくれて二人の兄弟に詳細を伝えてくれたのだろう。
とりあえず主人を寝かせるために家に帰って和室に布団を敷いた。
動転していたが頭の中の半分は結構冷静だったようで、これからしなければいけない事のリストを書いていたようだ。
実際は何も覚えていなかったのだが、あとで娘に
「お母さんてすごいね。やることリストがあって助かったわ。こんなに動転している時によく冷静に書けたよね」と言われた。
そのリストを見ながら、娘が中心になって葬儀の事も子供達でやってくれたのだ。
葬儀屋に夫を家に連れて帰って来て蒲団に寝かせた後、何を着せるかと聞かれて、スーツも可笑しいし本当に困った。
スーツはあるにはあるが年に一度着るかどうかという物なので、スーツを着た夫のイメージが全然わかない。
仕事着などあった訳でもないし毎日適当に楽な服を着ていたのだ。
それなのに今更おしゃれな服や堅苦しいスーツを着せても本人も落ち着かないだろうと思って、結局一番よく来ていたポロシャツとスエットのズボンにした。
葬儀屋にはこれでいいんですか?と聞かれたが、他にどうすればいいのか、堅苦しい服を着せるのはかわいそうだったので、せめてスエットの上下ではなく上をちょいとおしゃれなポロシャツにしたのが、ミソだったのだが…
加奈子はそれでいいと言って突っぱねた。
こんな所で見栄を張っても仕方がない。
夫が一番楽なようにしてやりたいと思ったのだが、着替えが終わった頃にやって来た娘は、ひとしきり泣いた後
「ねえ、もう少しましなおしゃれな服はなかったの」
と宣った。
「このポロシャツ、今年の父の日に裕子が贈った服じゃない。お父さん気に入ってちょっと出かける時によく着てたのよ」
「アッ、本当だ。それで着せてくれたのね。お母さん案外やさしいね」
案外ってなんだ案外って、そこは突っ込みたかったが、続々と近所の方が弔問に来て下さったので、泣いてる暇も娘に文句言う暇もなく時間は過ぎて行った。
病院で紹介された葬儀屋だったが良心的でとても親切な担当者で、余計な事を考えず、葬儀屋に不満もなく突然に亡くなった夫をきちんと見送る事ができてほっとしている。
遺体を引き取らなくてはいけないので、病院に紹介してもらった葬儀屋にまず連絡して自宅に遺体を安置してもらえるように手配をしてから、子供達に連絡したのだった。
長男、長女、次男の三人の子供達は皆この愛知県内に住んでいたので、長女の裕子に電話して事情を話して兄と弟に連絡するようにと頼んだ。
しっかり者の長女は、最初は絶句していたが涙声でわかったと言うと連絡係を了承してくれて二人の兄弟に詳細を伝えてくれたのだろう。
とりあえず主人を寝かせるために家に帰って和室に布団を敷いた。
動転していたが頭の中の半分は結構冷静だったようで、これからしなければいけない事のリストを書いていたようだ。
実際は何も覚えていなかったのだが、あとで娘に
「お母さんてすごいね。やることリストがあって助かったわ。こんなに動転している時によく冷静に書けたよね」と言われた。
そのリストを見ながら、娘が中心になって葬儀の事も子供達でやってくれたのだ。
葬儀屋に夫を家に連れて帰って来て蒲団に寝かせた後、何を着せるかと聞かれて、スーツも可笑しいし本当に困った。
スーツはあるにはあるが年に一度着るかどうかという物なので、スーツを着た夫のイメージが全然わかない。
仕事着などあった訳でもないし毎日適当に楽な服を着ていたのだ。
それなのに今更おしゃれな服や堅苦しいスーツを着せても本人も落ち着かないだろうと思って、結局一番よく来ていたポロシャツとスエットのズボンにした。
葬儀屋にはこれでいいんですか?と聞かれたが、他にどうすればいいのか、堅苦しい服を着せるのはかわいそうだったので、せめてスエットの上下ではなく上をちょいとおしゃれなポロシャツにしたのが、ミソだったのだが…
加奈子はそれでいいと言って突っぱねた。
こんな所で見栄を張っても仕方がない。
夫が一番楽なようにしてやりたいと思ったのだが、着替えが終わった頃にやって来た娘は、ひとしきり泣いた後
「ねえ、もう少しましなおしゃれな服はなかったの」
と宣った。
「このポロシャツ、今年の父の日に裕子が贈った服じゃない。お父さん気に入ってちょっと出かける時によく着てたのよ」
「アッ、本当だ。それで着せてくれたのね。お母さん案外やさしいね」
案外ってなんだ案外って、そこは突っ込みたかったが、続々と近所の方が弔問に来て下さったので、泣いてる暇も娘に文句言う暇もなく時間は過ぎて行った。
病院で紹介された葬儀屋だったが良心的でとても親切な担当者で、余計な事を考えず、葬儀屋に不満もなく突然に亡くなった夫をきちんと見送る事ができてほっとしている。