71歳の恋愛小説家
それなら、自分の時は潔く終えるようにしておきたいとつくづく思うのだった。

そして見つけたのがお寺の中にあるお墓の代わりになる小さな納骨堂。

これや!と思ったものだ。

お骨を治めて永代供養してくれて十六年たつとお骨は他の人達と一緒に処分され納骨堂も返上するのだが、その間はその納骨堂がお墓のような役割をしてくれる。

お経も上がるし法事もそこで行える。

十七回忌が最後の法事になると言う事だ。

信心深い人には叱られるかもしれないが、夫の十七回忌は今から十六年後で、加奈子は八十四歳になる。

それまでなら余程の大病をしない限りは生きていられるかもしれないが、三十三回忌には百歳になる。

生きていたとしても頭の思考はどこかに飛んで行っているだろう、多分。

一昔前の金さん銀さんのようにシャキッとし?頭もどうにか働いて自分の考えを言う事ができるならまだしも、自分自身どうがんばっても無理だと思うのだ。

ていうか、何とか九十迄にはピンピンコロリと行きたいものだ。

だから、それでちょうどいいと思える。

外じゃないのでお参りも冷暖房完備で快適なはずだ。

駐車場も完備されている。

お仏壇はリビングにおける小さくてしゃれた物を買った。

少し高くついたが、今回で費用もわかったので自分の時もそれだけは別においておけるし同じお寺に御願いしてもらうように子供達にも念を押しておいた。

そんな風にして一つずつ夫の居なくなった後の始末をつけて行った。

夫が自分の腕一つで頑張った会社のお陰で、三人の子供を大学まで行かせて、それぞれが家を持つときにも援助をしてやれた。

夫は本当に仕事一筋の人だったので、銀行や取引先の仕事の話もほとんど加奈子が担当していたのだ。

もちろん経理も、夫はどれだけ利益があるかなんてあまり考えないので、仕事の内容によって、引き受ける金額を決めるのも加奈子に任されていた。

これは夫でなくては出来ないだろうと言うような金型に関しては、こちらの言い値で通ったものだ。

そしてそんな難しいものに喜んで挑戦するのが夫のやりがいだったのだ。

実際の所、急に加奈子が先立てば残った者は混乱することになっただろう。

一応不動産の処分などは、税理士の先生と相談して決めたことを遺言して、預けてあったのだが、その必要も無くなった。
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