タイプじゃないと言われたので、好きな子ができるまで恋人にしてもらいました。
 ◇

 半分くらいまで進んだところで、下の玄関からガチャガチャと音がした。

 そして「ひな子ちゃん、上で待ってるよ〜」という、お姉さんの声。

 少し、姿勢を正す。

 急いでいるような、急いでいないような足音が階段をのぼってきて、ガチャ、と扉が開いた。


 そこに現れたのは――恋人の慎之介だ。


「慎っ。おそーい」

「……わり」

 息を吐きながら、リュックを下ろす。
 短い髪も、私のスカートと同じ色のスラックスも、しっとり濡れていた。

「帰り、部活の連中につかまった。『カラオケ行こうぜ』とかいって」

 彼のいるサッカー部も、今日は休みだ。
 この雨でグラウンドは使えず、室内の練習場所も確保できなかったらしい。

「『彼女と予定あるからムリ』って、言った?」

 にっこりと問いかけたら、じろりと見られた。

「……言うわけねーだろ」


 私たちは――周りに内緒で付き合っている。

 知っているのは、私が一番仲のいいあずさと、彼の家族だけ。
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