経営企画部の彼が半年間、彼女に連絡できなかった理由│Quiet Strength×Soft Strength2
 その後、足湯に入って、ティーラウンジでお茶を頂いて、暗闇リラクゼーションルームでまたぐでーっとする。驚くほどどこも静かで心も静まっていく。こんな癒され方もあるのかと綾音は初めての体験に目を閉じながらそう思った。司はいつも新しい経験をくれる。一緒にいると世界が広がる。幸せだなと思った。

 どのくらいの時間そうしていたのか。時間の感覚も曖昧になる程の静寂。

 不意に頬に指が触れて目を開いた。司だ。ここは声を出してはいけないので無言で見上げるとドアを指さしている。出ようと言っているのが分かって頷いた。



 さっき覗いた時には明るめのラウンジだったそこは、日が落ちて光も落としてナイトラウンジになっていた。昼間も静寂だったけれど、明かりが落ちると更に静かに見える。気のせいかもしれないけれど、空気が変わった様に見えた。

 何か飲もうか。と、誘われて中に入った。二人でソファに腰掛ける。冷たいハーブティーが美味しい。周囲を見回すと、皆ゆっくりと過ごしている。目を閉じてソファに体を預けている人。テーブルで本を読んでいる人。小声で話して笑っている男女もいる。その声は、多分隣の人に届くことは無い。静寂とは言わないけれどここも静かだ。

 隣を見ると司はスマホを見ていた。何見ているんだろうと思ったけれど話しかけることも画面を覗くこともしなかった。仕事じゃなければいいけど。とは思う。

「綾ちゃん。ねえ」

 そう思っていた綾音に、不意に司が囁いた。さっきのカップルみたいに耳元で。小さな声で。

 ここではそれがマナーだ。でも、不意に耳を撫でた声と息にびっくりして目を丸くしてしまった。

 その綾音の腰に、いつかの様に腕を回して司が囁く。不意に見えたスマホの画面に、このホテルの写真が見えた。施設の検索をしているのかと思ったらそうではなかったらしい。

「今日、ここに泊まらない?」
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