経営企画部の彼が半年間、彼女に連絡できなかった理由│Quiet Strength×Soft Strength2
「…え…」

 思わずそう呟いてから、綾音の顔は真っ赤になった。目を丸くして横を見ると、その綾音の反応を楽しそうに見ている司と目が合う。気まずくて俯いたら髪が触れるくらいに近付いて、司がまた囁いた。

「いや?」

「…あ…の…」

 嫌じゃ、ない。

 そう答えるように僅かに首を振る。

 けど…。

 そう思いながらも肯定の言葉が出ない。テーマパークからの帰り道、同じように誘われたことを思い出した。あの時あっさり頷けたのは、あああ。それも思い出すのが恥ずかしい。

 仕切り直して今の事を考える。今日も司の家に泊まることになるだろうと思っていた。だから服を買ってくれたんだろうし、金曜日の言葉でそのつもりなのは二人とも同じ筈。どこで寝るかだけの違いだ。でも、改めて誘われると照れてしまう。どうしよう。そう思っていたら司が助けてくれる。

「じゃあ、良い?」

 その静かな声は、自分しか聞けないものだと意識してしまう。誘惑してくるような、司の低い声。眩暈を覚えた。でも、ここはしっかりしなきゃと踏み止まる。

 司は疲れているし、何がある訳でもない。どっちにしても一緒。と、綾音は気持ちを整理して、ちゃんと小さく頷いた。

「…うん…」

 そうしたら、よしよし。と、司は背中を撫でてくれる。ほっとした。

 同時に情けなくも思う。いっつもそうやって扱ってくれるけれど、これでいいのかな。でも、司相手に自分が主導権を握るのは無理だよ。と、綾音は戦わずして諦めた。

 司がどうしようもない時にだけ、ちゃんとそれをできた事には綾音は気付かない。
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