経営企画部の彼が半年間、彼女に連絡できなかった理由│Quiet Strength×Soft Strength2

この時見据えていたもの

 あいつ、本当に凄いなぁ…。

 それから、空いている時間は質疑応答の練習に付き合ってくれ。司みたいなプロばかりではなく、素人の質問も欲しい。と、言われて、手が空けば経営企画の人間は社長室に呼び出されるようになった。質問をすることは自分の知識も深まる。そして、今の意図は何だったかという答え合わせもその場でできる。これはかなり楽しかった。これを繰り返すと、社長の知識、考え、姿勢が伝わってくる。元々たたき上げだった社長が、役員職を苦手と思っている印象は持っていた。けれど話せば経営だけを学んできた社長よりも別の意味で面白い。それに現場への理解も深くて誠実だ。この社長の良さが総会で伝わればいいなと思う。その為には伝える力を身に付けて貰わないと。

 そう思いながら竹田は経営企画部のオフィスに戻って来た。もう誰もいないだろうと思ったのに司の背中が見える。あいつ、まだいたのか。時計を確認したら二十一時を過ぎている。

「上野」

 声を変えたら司は振り返った。

「お疲れ様です」

「お疲れ…。まだいたのか?」

 もう帰れよ。ずっと遅いだろ。と、言いかけた言葉を飲み込んだ。司の顔に疲れが見えない。声にも。どうしてそんな事ができるんだと思いながら、いきなり倒れたりしないだろうかと心配になる。

「もうあまり時間もないので」

「総会か? …まだそんなにやることがあるのか? 手伝えることがあるなら言ってくれれば…」

「いえ、総会じゃないんですけど…」

「?」

 総会じゃない? じゃあ、何を見据えているんだろう。

 けれど司が自分から発信しないのなら、今は踏み込まれたくないのだろうと竹田は理解する。そして「あまり遅くなるなよ」とだけ言って先に部屋を出た。
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