経営企画部の彼が半年間、彼女に連絡できなかった理由│Quiet Strength×Soft Strength2
「綾ちゃん」

 三十分後。最寄り駅で綾音の姿を見付けた。

 その姿をずっと見ていなかったことに今更気付く。どのくらいの時間、自分はこの姿を思い浮かべることすらできなかったのか。すぐには思い出せなかった。それ位長い時間、ずっと待たせてしまっていた。一言も告げず。間違いなくここにいるよなと確かめるように振り返った綾音の肩に触れた。

「…え?」

 自分を見上げた綾音が、その行動に目を丸くする。自分に向けられた感情を図りかねて言葉が出なかった。何も考えられないのに、喜びと不安が混ざり合って何が何だか分からない。

 暫くそのまま見つめ合ったら綾音がふわりと笑う。

「…司君?」

 あ、大丈夫だ。

 とは、思わなかったけれど分かった。綾音はここにいるし、自分を受け入れてくれている。心底安心した。

 多分、他に沢山、言うべき言葉があったと思う。綾音以外の誰かなら、綾音からの言葉も自分の言葉も全く違う筈だった。

 でも綾音だから、司は綾音の肩に額を付けて笑う。この表現できない感情全部を込めて。

「…終わったー…」

 今更の疲労に押し潰されそうになりながら呟いた。こんなに疲れているなんて分からなかった。そのまま顔を上げられずにいたら、綾音の小さな笑い声が聞こえてくる。

「…お疲れ様」

 その言葉がじんわりと染み込んでいく。ああ、空気が。

「……うん」

 やっと空気が肺まで届く。司は半年ぶりの深呼吸をした。
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