経営企画部の彼が半年間、彼女に連絡できなかった理由│Quiet Strength×Soft Strength2
「…あ、そしたらさ。綾ちゃん」

「ん?」

「スパ行かない?」

 あの時は流石に無理だと諦めたけれど今なら行ける。綾音と二人で静かな時間を過ごしながら癒されるなんて最高かよ。と思った司の内なる本音など勿論聞こえる筈もなく。

「スパ? 行ったことないけど、うん。行ってみたい」

 と、綾音はすんなり頷いた。



 ホテルのロビーは昼間でも照明が少し落とされていて、外の喧騒とは違うゆっくりした空気が流れていた。

 スパの入り口はロビーの奥にひっそりとある。木製の扉に控えめな文字で「SPA」とだけ書かれている。中に入ると白檀と柚子を混ぜたような、落ち着く香りがふわりと漂った。

「いらっしゃいませ。お二人様ですね」

 受付の女性は図書館の司書のような静かな声で案内してくれたのに、綾音はちょっと緊張した。

 淡いグレーの館内着を渡されて更衣室に行く。肌触りは柔らかく軽くて、部屋着に欲しいなと綾音は思った。体を締め付けないゆったりした形。ホテルのロゴが小さく刺繍されていてシンプルだけど高級感がある。こんなものを着る日が来るとは。と思って綾音はこっそり一人でにやけてしまった。
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