よそ見なんてしてません!…たぶん。

 今日も輝きを放っている須波先生の前腕。

 スクラブから伸びる前腕は、肌色、太さ、筋肉の流れ、血管の浮き具合、すべてにおいて完璧だった。

 (朝から眼福……)

 思わず見つめていると、チラッとこっちを見た須波先生と目が合う。

 電カルをログアウトした先生は立ち上がり、私に向かって歩いてくる。

 え。

 え?

 そんな朝からわざわざ絡みに来なくても……

 ここ職場だし……!

 脳内で仕事モードの私と、恋愛モードの私が激しく押し合っている。

 距離が近づくにつれ、ドキドキと加速する心臓。ついに、恋愛モードの私が勝利した。

 にこっと口角を上げ先生を待ち構える。

 なのに、スクラブの袖が触れる距離で、ペースを落としもせず横を通過する須波先生。

 でも、私の耳にはちゃんと届いた。

 ………愛の言葉。

 「見過ぎ」

 ………うん。

 今日もクールだ。

 それでこそ、須波先生。お変わりなく。

 ……あぁ、尊い。

 付き合って一週間。

 いまだに私は彼氏を前にすると正常な思考を失う。

 それでも、毎日幸せだった。

 ――あの会話を聞くまでは。

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