弁護士さん、恋愛の仕方がわかりません
仕事が終わり、夜勤の山下さんと入れ替わる。

バックヤードでパーカーに着替え、いつものベージュのトートバッグを肩に引っ掛けて、挨拶もそこそこにコンビニを出た。

「お、お待たせしました…!」

コンビニ前のベンチに座っていた高嶺さんは顔を上げ、それはそれは小さな声で「…お疲れ様です」と言う。

私はそっと高嶺さんの横に腰掛けた。
ベンチがミシッ、と私の体重に対して嫌な音を鳴らしたけれど、今はそれどころではない。

「お疲れなのに、すみません…」
「いえ…それより、どうしましたか?」
「………」

高嶺さんの唇は真横に閉じ、膝の上で組んでいる手に力が入る。

そして、意を決したように背筋を伸ばして話し始めた。

「先日、田中さんに婚姻の打診を却下され。それ以降、我が家のリビングにて次なる有効な法的アプローチについて熟考を重ねておりました…」

まだ諦めずに考えていたらしい。
弁護士が法的なアプローチを真面目に考えるって、この人…大丈夫なのだろうか。

…いや、大丈夫じゃなかったな。

「熟考を重ねれば重ねるほど、結果は婚姻届という答えに辿り着き。しかし、一度却下されていますので再度申し込むわけにもいかず、有効な法的アプローチも浮かばず、それゆえコンビニから足が遠のき…」
「……えーっと?」

「…駄目だったんです」

ポツリ、と高嶺さんの口からシンプルな言葉が落ちる。

「田中さんに会わなかった3日間、僕は駄目でした」
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