シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―
15.もっと先
翌日。
午後の講義を終えた直充は、大学の事務室を訪れていた。
受付の奥へ視線を向ける。
何人かの職員が行き来しているが、探していた姿は見当たらない。
「すみません」
「はい」
「梨来さん、いますか?」
「ああ、梨来さんなら今ちょっと席を外してますよ」
「そうですか」
直充はもう一度、事務室の奥を見る。
いないなら仕方ない。
昨日の台車のことを伝えに来たのだ。
戻ってくるまで待つ必要はない。
「あの、台車のことで――」
「あれ、直充さん?」
聞き覚えのある声に振り向く。
「希美さん」
「何してるんですか?」
「事務室に用事があって」
「あ、私もです」
希美は直充の隣まで来ると、事務室の中を覗いた。
「梨来さんいます?」
「今、席を外してるって」
「えー、いないんだ」
希美が残念そうに肩を落とす。
「来る前に連絡しておけばよかったぁ」
今日は梨来と恋バナをしようと、事務室までやって来たらしい。
希美はスマートフォンを取り出した。
「直充さんは?」
「?」
「梨来さんに連絡しないんですか?」
「連絡?」
「戻る時間、聞けばいいじゃないですか」
希美が瞬きをする。
「もしかして……」
「?」
「梨来さんの連絡先、知らないんですか?」
「知らない」
「え」
「…………」
「本当に?」
「……ああ」
希美は直充を見つめる。
直充も見返した。
何かおかしなことを言っただろうか。
やがて希美はスマートフォンへ視線を戻した。
『梨来さん、今どこですか?』
少しして返信が届く。
「あ、もうすぐ戻るそうですよ」
「そうか」
それなら。
直充は受付へ向けかけていた身体を戻した。
「待つ」
「はい」
希美は再び画面へ目を落とす。
『直充さんが梨来さんに用事あって来てますよ』
送信。
続けて、
『そういえば直充さん、梨来さんの連絡先知らないみたいです』
『教えてもいいですか?』
しばらくして、スマートフォンが震えた。
「あ、返事きました」
「…………」
画面を確認した希美が、直充を見る。
「直充さん、梨来さんの連絡先、知りたいですか?」
「…………」
直充が少しだけ考える。
「考えたことなかったな」
「え」
希美は直充を見つめた。
「じゃあ、教えますね」
「え?」
「梨来さんには、教えていいか確認したので」
「…………」
「はい、スマホ出してください」
少し強引な希美に押されるように、直充はスマートフォンを取り出した。
「こういうのは知っておいた方が便利ですよ」
「そういうものか?」
「そういうものです」
希美を介して、梨来の連絡先が直充のスマートフォンに登録される。
「はい。これで大丈夫です」
「……ありがとう」
「いえいえ」
希美は満足そうに笑った。
直充は登録された梨来の名前を一度だけ見て、スマートフォンをしまった。
午後の講義を終えた直充は、大学の事務室を訪れていた。
受付の奥へ視線を向ける。
何人かの職員が行き来しているが、探していた姿は見当たらない。
「すみません」
「はい」
「梨来さん、いますか?」
「ああ、梨来さんなら今ちょっと席を外してますよ」
「そうですか」
直充はもう一度、事務室の奥を見る。
いないなら仕方ない。
昨日の台車のことを伝えに来たのだ。
戻ってくるまで待つ必要はない。
「あの、台車のことで――」
「あれ、直充さん?」
聞き覚えのある声に振り向く。
「希美さん」
「何してるんですか?」
「事務室に用事があって」
「あ、私もです」
希美は直充の隣まで来ると、事務室の中を覗いた。
「梨来さんいます?」
「今、席を外してるって」
「えー、いないんだ」
希美が残念そうに肩を落とす。
「来る前に連絡しておけばよかったぁ」
今日は梨来と恋バナをしようと、事務室までやって来たらしい。
希美はスマートフォンを取り出した。
「直充さんは?」
「?」
「梨来さんに連絡しないんですか?」
「連絡?」
「戻る時間、聞けばいいじゃないですか」
希美が瞬きをする。
「もしかして……」
「?」
「梨来さんの連絡先、知らないんですか?」
「知らない」
「え」
「…………」
「本当に?」
「……ああ」
希美は直充を見つめる。
直充も見返した。
何かおかしなことを言っただろうか。
やがて希美はスマートフォンへ視線を戻した。
『梨来さん、今どこですか?』
少しして返信が届く。
「あ、もうすぐ戻るそうですよ」
「そうか」
それなら。
直充は受付へ向けかけていた身体を戻した。
「待つ」
「はい」
希美は再び画面へ目を落とす。
『直充さんが梨来さんに用事あって来てますよ』
送信。
続けて、
『そういえば直充さん、梨来さんの連絡先知らないみたいです』
『教えてもいいですか?』
しばらくして、スマートフォンが震えた。
「あ、返事きました」
「…………」
画面を確認した希美が、直充を見る。
「直充さん、梨来さんの連絡先、知りたいですか?」
「…………」
直充が少しだけ考える。
「考えたことなかったな」
「え」
希美は直充を見つめた。
「じゃあ、教えますね」
「え?」
「梨来さんには、教えていいか確認したので」
「…………」
「はい、スマホ出してください」
少し強引な希美に押されるように、直充はスマートフォンを取り出した。
「こういうのは知っておいた方が便利ですよ」
「そういうものか?」
「そういうものです」
希美を介して、梨来の連絡先が直充のスマートフォンに登録される。
「はい。これで大丈夫です」
「……ありがとう」
「いえいえ」
希美は満足そうに笑った。
直充は登録された梨来の名前を一度だけ見て、スマートフォンをしまった。